「流れ行くミモザの旅」
家に帰って、両親にその話を持ち出した。母は、いいお話かもしれないから、紹介していただいたらと言った。
「このまま家にいても、私たちは先にいくのだから、年金も何もない生活になってしまうのは目に見えているの。蓄えも少しずつ減っているし、私たちの死んだ後のことを考えると、心配で…。もう一度いいチャンスに恵まれないかと、いつも願っていたの」
「その父親と言うのは、何と言う会社に勤めているんだ?」
と、父は聞いた。
「中小企業で、上場してもいないから、『桑井商事』と言っても、誰も知らないだろうって、松岡君は言っていました。でも、しっかりした会社だと、言っていましたわ」
「ふーむ」
「幸運の女神って、前髪だけしかないって、いいます。振り返って、捕まえようとしてもだめなのよ。チャンスを逃してはしけないわ。おつきあいさせていただいたら?」
「ふーむ」
父は、腕組みしたまま、それ以外は何も言わなかった。
ミモザは、松岡の差し出した携帯の中にあった、笑窪のある親しみやすい顔を思い浮かべていた。今度松岡に会ったら、会わせてほしいと頼もうと思っていた。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


最近のコメント