2006年10月14日 (土)

「流れ行くミモザの旅」

 家に帰って、両親にその話を持ち出した。母は、いいお話かもしれないから、紹介していただいたらと言った。

「このまま家にいても、私たちは先にいくのだから、年金も何もない生活になってしまうのは目に見えているの。蓄えも少しずつ減っているし、私たちの死んだ後のことを考えると、心配で…。もう一度いいチャンスに恵まれないかと、いつも願っていたの」

「その父親と言うのは、何と言う会社に勤めているんだ?」

と、父は聞いた。

「中小企業で、上場してもいないから、『桑井商事』と言っても、誰も知らないだろうって、松岡君は言っていました。でも、しっかりした会社だと、言っていましたわ」

「ふーむ」

「幸運の女神って、前髪だけしかないって、いいます。振り返って、捕まえようとしてもだめなのよ。チャンスを逃してはしけないわ。おつきあいさせていただいたら?」

「ふーむ」

 父は、腕組みしたまま、それ以外は何も言わなかった。

ミモザは、松岡の差し出した携帯の中にあった、笑窪のある親しみやすい顔を思い浮かべていた。今度松岡に会ったら、会わせてほしいと頼もうと思っていた。

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